茶房にてしぐれせんべいを焼き続ける理由


京西陣菓匠宗禅本店では、毎日茶房にてあつあつ手焼き「しぐれせんべい」をお召し上がり頂いております。しぐれせんべいとは、サクッとした食感と、モチモチとした二つの食感を、一枚で味わって頂けるおせんべいであり、冷めると食感が変わる事からも、一切のお持ち帰りをお断りさせて頂いております。

しぐれせんべいは、「本物の焼きたての美味しさを

お召し上がり頂きたい」。また「あられ・せんべいがどのようにして作られるのかを皆様に知って頂きたい」との想いにより、毎日茶房にて焼き続けております。

観光地に行くと、焼きたてせんべいたる物が売られているのをよく目にします。しかしそれらのほとんどは既に工場などで焼かれたせんべいに醤油やタレをつけ、再度温めて香ばしい匂いを出しているだけで、本物の焼きたてとは言えないのです。

本物の焼き立てとは注文を頂いてから生地から焼き始める。だからこそ焼き上げた後、数秒しか味わう事が出来ない美味しさが楽しめるのです。

しかし生地から焼くとなると、お客様が居ても居なくても、たとえその日は一切注文が無かったとしても、釜の火を絶やす事は出来ません。なぜならしぐれせんべいを焼く事のできる状態まで釜の温度を上げる為には、釜に火を点けてから約半時間以上はかかるからなのです。更に誰でもすぐに焼けるものではなく、必ず私が直接、何度も指導を行い、技を習得したものしか焼く事が出来ません。とても不効率で有ります。

その為同業者の方から「あんな採算に合わない事をしてバカみたいだ」とののしられた事も有ります。しかし私どもは、誰に笑われ様ともそれをやめる事はありません。

なぜなら菓匠宗禅は「職人の意義が薄れていく社会において、本物の技・味を追求し、後世により良き文化を継承する」事を自ら課せられた使命として掲げているからなのです。「本当の手焼き、焼きたての味・香り・食感・色・形そして音に至るまで、出来たての本物全てを五感から感じて頂き製法の違い並びに美味しさの違いを伝え残したい」という想いを実現する為に、今日も西陣の町屋に焼きたてしぐれせんべいの香りが漂います。