上技物あられ「亀」の開発秘話 | 京西陣 菓匠 宗禅
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商品開発秘話

上技物あられ「亀」の開発秘話

上技物(じょうわざもの)と呼ばれる、あられ作りの技術の奥義を極めたあられであり、日本で作り出せるのは菓匠 宗禅のみという唯一無二のあられ。

国内で販売されているあられにも、多少の細工を施したあられがありますが、これほど精緻に作られているあられは、他には決してありません。その証拠に、今でも他のお店から尋ねられたり、販売してほしいと求められるあられであり、まだまだ歴史の浅い当社が、皇室や海外の王室に献上することができのるほどの地位にまで押し上げてくれた世界最高峰のあられ。

何が、そこまでのあられなのか?その秘密の一つは、技と主原料のこだわりにあります。

今でこそ、菓匠宗禅といえば【亀のあられ】と覚えていただいている方も多くなり、当社の代表銘菓と呼ぶにふさわしい商品になりました。実は、この【亀のあられ】を作り出すまでに、大変な決断と行動がありました。ですから、この亀のあられを作りだすために、人生を賭けたと言っても過言ではありません。

ある時、この亀を作るだけのために周囲の全員の反対を押し切り、京都に新工場を建てました。その時の経営状態を考えると、創業してようやく軌道に乗りつつある時期でしてので、あまりに無謀であり、成功する保証は何もなく、過大投資で失敗すると言われても当然のことでしたので、正に人生の賭けでした。

しかし当時の僕は誰がなんと言おうとも【亀を作る】という信念を曲げたくなかったのです。 亀のあられを作り出せないのならば、私はあられづくりを辞める決意し、周囲を納得させ挑んだのでした。

今でも、亀のあられが完成した時のことは決して忘れることが出来ません。 来る日も来る日も新工場で亀のあられを作り続け、真冬の工場に朝日が昇る前から、真夜中まで、寝ても餅のことが気がかりで起きてしまい、深夜二時から餅とにらめっこしていた夜が何日もありました。途中で、腰を痛めて動けない状態にまでなりましたが、決して諦めたくありませんでした。その時の僕は、最後には、あられの神様が「ここまでよく頑張った」とご褒美として作ることを許してくれると信じていました。

この亀のあられ一粒を作りだすために、どれぐらいの日数と時間がかかるかご存知ないと思います。実に多くの時間と労力がかかり、亀の小さなあられ一粒を作り出すだけのために、なんと7日から10日という考えられない日数がかかります。そして、3日間も誤差が生じる場合もあります。今の時代の生産管理や経営効率を考えると、時代に逆行している生産方式であり、平たく言ってしまえば、全く割に合いません。何も知らない他の菓子メーカーの方からは、馬鹿にされる始末です。

ところで、3日間の誤差が生まれる訳は、餅は生きているからなのです。餅を切って乾燥させて焼いたものがあられ、毎回、餅はその表情を変えます。天気や気温、湿度によって大きく左右されてしまうために、餅生地を天日で干すとき、雨だったり、冬の寒い日だったりすると乾かすために倍以上の時間がかかる場合があるというわけです。

亀のあられは、一見すると「どこにでもあるような」、「誰にでも作れるような」、「機械で生産したかのような」・・・、あまりに当たり前に出来ているために、その技術を認められることも、誉められることも、これまで一度もありませんでした。

ところが、誰でも作れるものではないのが真実です。昔のあられ職人さんたちでも、高度な熟練の技術だったにも関わらず、あまりに職人気質が強い業界だったからでしょうか、その技について伝承もされず、あられを作る技術そのものが衰退していったのです。

他の菓子業界であれば、飴を使ったオブジェや砂糖を使った伝統菓子が幅広く知られており、愛され認められているのですが、あられは少しずつ世間から忘れられていったのでした。

あられづくりの技術とは・・・、それは餅を思い通りに操る技術のことを言います。想像してみて下さい、お餅は焼くと四方八方、自由自在に膨らみますよね。その膨らみ方を意のままに操ることが出来ると思われますか?通常であれば、ほぼ不可能なことです。

その餅を、亀の形にしか膨らまないように操るのが、上技物あられを作り出す技術なのです。

しかも、当店の亀のあられは、雄と雌を作っているのです。ぷくっとお腹が膨らんでいるのが雌で、ぺちゃんこなのが雄。雄と雌の亀を作っているのは、ほとんど知られていません。

雄雌を作る理由は、食感と味が異なるから。少しの違いだけれど、その差であられの味が変化することを楽しんでほしいと思うからです。

膨らみの違いなので雄雌を作り分けていることを知らないアルバイトの人たちは、膨らんでいない亀のあられを失敗作と思っていたほどでした。しかし、あくまでも意図的に作り出しています。それは餅のつき方から水分量、温度、湿度まで管理しなければ、雄雌を作り分けは出来ないのです。

そして、最も困難な技が亀の甲羅の紋様となる筋入れ。 4ミリに薄く切った餅をまず亀の形に抜き、そして一枚一枚に2ミリ程度の紋様を彫ります。 彫りが浅いと焼いた時に亀の形に膨らまず、深すぎると乾燥の時に生地が割れてしまいます。同じ生地でも中心部はコンマ数ミリ深く、外側に行くほどコンマ数ミリ浅く彫る。 これこそ、熟練した職人しか出来ない技になります。

もう一つ亀のあられにとって大切なものと言えば主原料の米。その年の最も良く適した餅米でないと作ることが出来ません。
ですから、新米が穫れた時期から次に用いる米を全国各地で探し、作り試しを何度も行います。次の年に使う米を決めるのも、容易なことではないのです。自家農園や契約農家と大きく謳っているメーカーさんもありますが、当家では代々、自家農園や契約農家を持つことを禁止されています。それは自社農園や契約農家を持つと、米の不作の時や出来栄えが悪い時でも、できたお米を使わないといけなくなるからです。

お米はその年その年の気候によりが大きく出来が左右してしまいます。しかし主原料である米の質が悪いと、4ミリの薄さに削った餅生地に、甲羅の紋様となる2ミリ程度の筋を入れることが出来ないのです。筋が入ったとしても、乾燥の時に生地が割れてしまうという残念な結果になってしまうからです。

上技物あられは、米が命。
だからこそ菓匠宗禅では自家農園を持つことよりも、その年その年の最もあられ作り適した良いお米を選ぶことを最重要としています。

そして最後に味の決め手となる秘伝醤油たれ。たまり醤油にかつおや昆布のだしのうまみ成分に、みりんや砂糖などをブレンドし作り上げる。
菓匠宗禅醤油たれは代々100年に渡り、減っては足し減っては継ぎ足しと、代々の歴史を重ねてきた旨味と重みのある味なのです。

そして今日も一粒一粒に真剣勝負、魂を込めてあられを焼き続けています。

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