西陣織に欠かせない「杼 (ひ)」。経糸(たていと)に緯糸(よこいと)を通して 織物にするための道具です。素晴らしき日本文化のひとつですが時代 の流れと共に失われつつあります。
日本でただ一人の「杼職人」長谷川さん。
後継人がなく製作所の暖簾を下すこととなりました。
またひとつ。日本の伝統が失われてゆきます。
そんな中で、 「せめて、その技と匠が西陣にあったことの <証>を残すことができないか」
西陣の町衆は その想いを「名物菓子」に託しカタチを残すことで 末長く語りついでいけるのではないかと考えました。
◆挑戦
ー杼(ひ)伝承への挑戦 ー
町衆の中から...
「せめて杼(ひ)の形だけでも、例えばお菓子にして残せないものか。杼(ひ)は西陣織の象徴だ!」
「洛外へ出かけた時に、自分たちの町を語れるお菓子を作りたい!」
「自分たちが愛する西陣の町を世界中に知ってほしい!」
「西陣の町衆が集まればできる!」
小さなつぶやきが次第に大きな声となり、町を挙げてのプロジェクトとなっていきました。
それは西陣の町衆の思いを乗せ、長谷川さんの杼を模した和菓子を作ること、そして『西陣名物』開発のための挑戦としてスタートしました。
そして町衆の一員でもあります、 菓子作りの上技師 山本宗禅に 創作の命がくだされました。
<杼菓子(ひがし)が完成しました>
西陣の町衆の方々が集まり、約3年ほどかけて動いて きたプロジェクトです。
最後の杼職人である長谷川さんの技術を後世に残す ために、そして西陣の新しい名物・町を語れるお菓子 の開発を行うためのプロジェクトが ようやく完遂しました。
西陣の味である『五辻さんの昆布』と『近為さんのお 漬物』を用いて、杼(ひ)を模したお菓子作りを僕が担 当し進めて参りました。
その責任の重さと、昆布や漬物と和菓子とのマリアー ジュには苦労しましたので、 役割を果たせて少しほっとしております。 かなり味には好き嫌いはあると思いますが、 新しい西陣名物となる日を楽しみにしております。